特別養護老人ホームの建設促進策 ‐東京都と同じ基準に‐

質問 中川 浩

 私は、県社会福祉審議会の委員としてこのテーマについて2回の会議で発言してまいりました。知事も言われるように、埼玉県は一番高齢化率のスピードが速く、なおかつ核家族化や都市のコミュニティが一部崩壊している中で、首都圏にある高齢者施設のニーズ、需要はますます高まっていくと考えますが、いかがでしょうか。
 超高齢化したときに備え、施設をどの程度整備できるのか、仕組みを変える必要があると思います。東京都では、昨年既に独自に基準を定めました。どういうことかと申しますと、東京都の基準は、国の基準で廊下の幅が1.8メートルのところを東京都は1.5メートルに、ユニット定員、一部屋当たりの定員を12人以下と特別養護老人ホームが欲しいと思っている都民の視線に合わせて改革をしている姿勢が示されているのです。
 東京都以外の他県でも、私が知り得る限り、関東では神奈川県、千葉県、群馬県は埼玉県が今回提案しているものよりも基準を大きく改めようとしています。埼玉県内の施設事業者、いわゆる特別養護老人ホームの事業者にアンケートをとった埼玉県の資料でも、既に特別養護老人ホームを建設した事業者であるにもかかわらず、27事業者が緩和を求めています。恐らくこれを聞くと「いや、防災の観点から今回はこれを見直しませんでした」という答弁が返ってくることを想定しますが、前例踏襲主義の言いわけにすぎないと思いますし、小規模型の特別養護老人ホームは、既にそのような基準で行われております。
 東京都は地価が高いからと県担当職員は言われますが、東京都の多摩地域の現状は特別養護老人ホームの設置率と埼玉県の設置率、言い方を変えます。もう一度申し上げますが、東京都の多摩地域で設置をされている特別養護老人ホームの数と埼玉県の設置されている特別養護老人ホームの数を考えると、東京都の多摩地域の数のほうが多い現状にあります。
 埼玉県では「施設から在宅へ」という方針をお持ちのようです。そうはいっても介護を必要とされる家庭から見ると、実態がなかなか理想論の域を出ないのではないかと思います。県内の高齢者に対する虐待件数は、分かっているだけで平成19年度からの4年間平均で650件、虐待や心中による死亡は10件という現状であります。私は、本来施設に入りたいのにいっぱいだから入れなくて、結局殺してしまうというリスクも当然防災上のリスクの一つであり、そのことも含めて総合的に考えていただきたいと考えます。今介護が大変な人から見たら、今までの踏襲としか私には思えませんし、おとといも介護されている方から私と同意見のメールをいただきました。建設基準について東京都と同じ基準にしていただきたいと思いますが、今後どうされるお考えなのか、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。


答弁者:上田清司 知事

国において地域主権一括法が制定され、義務付け・枠付けの見直しが行われております。
 その一つとして、特別養護老人ホームについても廊下幅などの基準を県が独自に設けることが可能になりました。
 私は、昨年発生した未曾有の大災害であります東日本大震災の教訓を県政の、特に、あらゆる政策の中でも災害対応ということを意識して考えておくべきだというふうに指示をしているところでございます。
 福祉施設の基準についても、入居者の安全を何よりも優先すべきだと考えております。
 お話のように、東京都は、地価が高く土地の確保が困難な状況でございます。
 そのため、廊下幅を狭くした基準を設定しております。
 そのようにしたらどうだという御提案ですが、本県では幸い事業者の整備意欲も高く、特別養護老人ホームの整備は計画数を上回っております。
 東京都のような配慮をしなければ整備が進まないという状況には、現在のところありません。
 そういう状況があったときには、また、意見を聞いて、そうした判断も必要かもしれませんが、今のところは枠を作ったところにそれ以上の整備をしたいという方々が申込みをしているところです。
 今後の施設整備に当たっては、入所の必要性の高い要介護4以上で今すぐ入所を希望する方の人数を踏まえる必要がありますので、第5次計画では、こうした入所ニーズに対応できるよう平成26年度末までに約7,000床を新たに整備していくことにしております。
 施設を運営する現場の意見も聞きました。
 災害時など緊急時に備えて、ベッドがすれ違うことのできる幅の廊下が必要だという意見もございます。現行どおりでよいという意見が85.2%でございました。
 また、東京都では、1ユニット当たりの入居定員を概ね10人以下から12人以下に緩和しています。
 東京都は、住宅地の平均地価が本県の2.8倍という特別な事情が、やはりその前提にあるのではなかろうかと思っております。
 この場合にしても、1ユニット当たりの入居定員が増えても、配置する職員数を増やさないと、サービスの質の低下を招くことになりますので、そういう意味では、事業者へのアンケートでも80.4%の方が現状でよいという回答をされているところでございます。
 そうしたアンケートの経過や、そして埼玉県の事業者の意欲、そして入所者の安全、諸々考えて、国の省令と同じ基準に埼玉県はしたところでございます。
 今後、事情が変わってくれば、特に、三多摩の事例を出されました。
 確かに、区部ではなかなか進まない、大きく埼玉県などと比べればダウンしております。
 埼玉県の平均よりも、三多摩の方がよい状況はあります。
 それは、やはり三多摩しかできないという事情がそうしているのであって、埼玉県が緩和されていないから三多摩に負けているということではなくて、埼玉県全体の枠の中では十分事業者意欲を満たす状態にはなっているということについては、是非、ご理解をいただきたいと思います。