有料橋(県道狭山環状道路)の無料化

(1)工業政策としての産業道路無料化

 次に、工業政策としての産業道路無料化について伺います。今から申し上げる事は、県内の少なくない市町村が抱えている問題で、狭山市での問題は、まさに象徴的な事例であります。
 さて、私は学生時代、自転車で日本一周した時に、企業城下町として発展し、そして衰退したまちを見てまいりました。 日本経済は今、衰退に向かっており、これまで国内工場で生産していた所が、例えば2008年の1年間に海外移転によって失われた国内の雇用は96万人にも上り、今後、東南アジアの中進国での生産は加速度的に増え、一方で、国内の生産、雇用は落ち込む事が予想されます。
 例えば狭山市内の事業所数は、平成10年には271でしたが、平成20年には233に減りました。市の人口はこれまで最大16万3,000人おりましたが、現在5,000人減ったのは、市内工場の他市への移転の影響が少なくないと思います。今後人口は減り続け、2035年には人口の2割にあたる3万4,000人が減り、65歳以上の人口は現在の2割から4割になり、生産年齢人口は3分の1減るとの事。
 この予測には工場などが減っていく事は想定していないので、予想よりも人口の減少は厳しいと思って備える必要があり、既存の雇用を守っていかなければ未来はありません。市の法人税収の多くが製造業からで、法人税収の6割以上が自動車関連企業からのものと推察されます。
 埼玉県にとって寄居・小川町へのホンダ工場の誘致は最優先事項だったと思います。 物流と生産の観点から見て、2年後に稼働する寄居町の工場の場所がなぜ選ばれたのかを考えると、広い敷地で高速道路に近く、幹線道路も整備され、渋滞もない事です。これまで首都近郊にあった工場が地価や固定資産税の安い地方に移転するのも、そういう理由だと思います。  狭山市には2つの工業団地の間に川があり、川の隣に国道16号があるのは都市計画上では大きな課題で、橋は朝夕特に混雑します。 県道である狭山環状有料道路が無料であれば、狭山工業団地、圏央道狭山・日高インターチェンジ周辺からの物流はスムーズに国道に流れていき、工業団地は税金を納めている恩恵に預かれるはずです。
 昨年、私は道路管理者の埼玉県道路公社に伺いました。狭山環状有料道路は、総事業費56億円で、昭和62年に開通し、現在の返済残金は35億円、無料化する為に今清算するとすれば、県が11億円は持ち、市は残りの24億円を負担する事が基本的な仕組みとの事です。
 しかし、このまま有料橋で利用料金を取っていても、有料である期間30年の平成33年までに料金収入で賄う事が難しい事を県道路公社も認識しており、有料であるが故に、料金所の人件費で有料期間の残り10年のうち2年分は、工事費の償還に使われるのでなく、人件費で消えてしまう程の不採算な路線で、ムダがあると思います。利用率が低いのは有料だからで、投資的効果から考えてどうなのでしょうか?
 今後は、国内・県内の工場は、どこも安泰ではありません。まず、日本の法人税は諸外国よりも高い中、海外でなく国内に残ってもらい、国内では、他の県の工場よりも、埼玉県の工場が存続していけるようにしなければならない、し烈な地域間競争の時代に入っており、埼玉県として、何か手を打つべきと考えます(が、その中で例えば、狭山環状有料道路のような有料の産業道路無料化はかなり有効なものと考えます)。
 狭山環状有料道路と東京狭山線は、日高市・狭山市から浦所バイパスに抜ける唯一のバイパス道路です。 埼玉県の有料道路設置の経緯は存じておりますが、東京狭山線は未だ完成しておらず、東京狭山線が計画された時点で、まだ計画の無かった県道が今では完成している所は、いくつもあると思いますので、有料道路としての経緯は崩れていると思います。
 既存企業がその地域に残れるように、工業政策としてせめて産業道路を無料化すべきではないでしょうか?知事の御所見を伺います。 また、以降は県土整備部長に伺いますが、無料化にあたり、市が県に出すお金を分割納付や借り入れで行うのは可能でしょうか? あるいは、産業政策としてお聞きしておりますので、事業所の車両だけ、無料化や割引は出来ないでしょうか?

(2) 通勤・通学者対策

 東京狭山線の開通時期について、“東京狭山線”を1日も早く全線開通させたいと思いますが、いかがでしょうか?

答弁者:上田きよし県知事

 「工業政策として産業道路の無料化」でございます。 この点についても、最後の判断は受益者負担という形の中で造った有料道路を無料にするという考え方でありますので、一般的に言えば、受益者が負担して、ケリをつけていくというのが、本来の考え方でありますが、それを止めるという話となると、どこがそれを負担するのかということになってきますが、県も狭山市の方が中心になって使うものを県費で全く無料にするという話になってくると、多くの県民の皆さん達の賛同を得られるかどうかについて、私は疑問を感じております。
 狭山市が相当負担をすることを覚悟するかどうか、この問題もあると思いますし、また、無料化に伴って、それだけの財政支出をしても、上回るだけの経済効果があるのかどうか、この部分も検証しなくてはいけませんので、多分この辺は、りそな財団あたりで、問題的な部分を、要素を出せば、調べていただける可能性があると思いますが、この部分は中川議員の質問に対してお答えをし、上回るような効果があるのかどうか、そして、その次には、狭山市が負担するのかどうか、こういった所の課題になってくるかと思っており、こういった所の答弁で御理解を賜りたいと思います。以上です。

答弁者:県土整備部長

 (1)「工業政策としての産業道路無料化」のうち、「市が県に出すお金を分割納付や借り入れで行うのは可能か」についてでございます。 受益者負担を原則としている有料道路を料金徴収期間の満了前に無料化する場合は、その時点での債務を返済する必要がございます。 無料化するためには、債務の返済を地元狭山市に負担していただくことが必要と考えております。 お尋ねの分割納付や借入につきましては、市から具体的な提案がなされた段階で検討していく課題と考えております。  次に、「事業所の車両だけ無料化や割引は出来ないかについて」でございます。 この道路の料金割引につきましては、国の事業許可で、回数券による割引、障害者を対象とした割引及び一般路線バスを対象とした割引に限定をされております。  このため、御質問の事業所の車両だけを対象とした無料化や割引は、現在の事業許可の中では実施できないこととなっております。
  現在、県が管理する有料道路において、全ての車種に対して、利用回数に応じた割引の回数券を販売しております。 今後とも、この回数券割引により、様々な利用者の利便性向上を図ってまいります。
 次に、(2)「東京狭山線の全線開通」についてでございます。 この道路は、東京都境から圏央道狭山日高インターチェンジに至る、延長約16.8キロメートルの都市計画道路でございます。 これまでに、約14.4キロメートルが開通しております。 現在、「堀兼・上赤坂ふるさとの緑の景観地」を含む堀兼工区のうち、約1.9キロメートル区間で、希少動植物の保護などの環境対策を実施しながら、残る用地の買収と工事を進めております。 堀兼工区と、4車線化の工事を進める狭山台工区につきましては、平成24年度末までの完成を目指しております。
 また、都境から約0.5キロメートル区間の所沢市下安松工区につきましては、現在、道路の詳細設計と用地買収を進めております。 今後も、狭山市や所沢市をはじめ、地元の方々の御理解、御協力をいただきながら、鋭意用地買収や工事を進め、早期の全線開通を目指してまいります。