関東大震災(東京湾北部地震)対策

 東日本大震災による死者と行方不明者は合わせて2万2806人です。 今回の震災前に、私達は、日本国内で1万人以上の方が災害で亡くなる事を現実の問題点として意識して、どれほど取り組んで来たでしょうか。 また、自分達が影響受ける事が分かっているはずの関東大震災の死者数をリアルに意識して、公共施設の耐震化など行政だけで出来る事以外の、県民に協力を求めなければ前に進まない今回の質問項目はどの程度、前に進もうとしているでしょうか。 この16年間、震災が起きる度に、震災計画は見直されて来ました。計画を見直す事もさる事ながら、対策の何が結果的に前に進むかを問いたいと思います。 千葉県北西部地震でも、帰宅困難者対策など首都直下地震の課題は浮き彫りになったはずです。 ご承知の通り、これまで起きなかった事が起きるのが災害で、それを想定外とせず、想定していかなければなりません。 首都直下地震が起きた時、被害の中心は、東京都だと多くの方が思われていますが、通勤・通学で都内に行かれている方の多い埼玉県民で、亡くなる方も出て来ると思います。一方県内の死者見込みは最大で716人です。リアリティを持って対策を進めていかなければなりません。危機感の無い所に変化は生まれないという視点に立ち、以降いくつか質問をさせて頂きます。

(1) 緊急道路の渋滞対策

 街で「この道路は災害時は緊急道路になります」という標識を見かけます。しかし、今回の震災でさえ、都内は渋滞し、町田市で立体駐車場が崩落し10人が死傷した現場では救助車両の到着が最大1時間半かかったとの事です。 災害に見舞われた人々が、緊急道路と認識して使用しないとは考えにくいのですが、どう認識し、実際に、緊急道路として運用させる為に今後どのような対策を取るのでしょうか? 歩行者であっても、今回の震災でさえ、もう少しで将棋倒しに遭う恐れのある所もあったとの事で、首都直下地震が起きれば、都内で火災も発生し、移動する事で火災や、人ごみの混乱に巻き込まれ、県民も危険にさらされます。 今後災害があった時は、職場・学校など、その居合わせた地域の救助活動にあたり、家の地域にいた人がその地域の救助に当たる考えに立ち、大規模災害時の埼玉県・東京都の被災当日の基本はその地域から“動かない”事を通勤・通学者の方々も含めて徹底されるのでしょうか? 地震が発生し、死傷者が多数見込まれると埼玉県知事や都知事が判断した時、実際に規制されるよう徹底する事は可能でしょうか? 私は、9都県市で連携し記者会見を行ってTVに映り、TVコマーシャルで通勤・通学者対策と合わせ、PRしてはいかがでしょうか? 自分の会社だけでなく、都内などでは日頃から、地域の会社同士が連携して、“防災隣組”を結成しており、埼玉県でも推進して頂きたいと思います。

(2) 通勤・通学者対策

 県民の通勤・通学者は110万人で、災害が起きた時、都内の帰宅困難者は300万人、県民の帰宅困難者は67万人が見込まれています。まず気になる事は、東京都と埼玉県の基本的な考えが一致しているかという事です。私が聞いている範囲では、埼玉県の考えは「むやみに動かない」という事で、東京都では「出来るだけ帰って頂く」という考えなのではないでしょうか。そして、その埼玉県の考えは、県民の皆さんに定着していないと思います。 今回の災害で、電話回線はまたしてもパンク。電話がつながらなければ、心配になり、人は確認する為に移動しようとする、帰ろうとします。 災害時に救助活動の車両を優先する為に、安否確認の確立は不可欠です。 国の動向を待っている限り、対策は浸透しません。 伝言ダイヤル訓練は、毎月1日・15日に行えます。まず早速県職員全員が訓練を行い、高校・企業でやって頂けるようにしてはいかがでしょうか?鉄は熱い時に打たないと、過去の震災では数カ月後には、人々の記憶から消えていきました。防災計画が見直されてからではなく、やれる事はやり始めないと浸透しません。 また、伝言ダイヤルだけでは、通信がパンクするので、別の媒体を県や9都県市で検討して構築した後、9都県市でPRしてはいかがでしょうか?危機管理防災部長に伺います。 また、特に大事なのは、お子さんの安否だと思います。県内の一部の市では児童生徒の安否情報システムが構築されようとしていますが、市町村の自主性に委ねるのでなく、県として例えば小中学校の安否確認もシステム化が必要ではないでしょうか?教育長に伺います。

(3) 「ハイパーレスキュー部隊」に県の予算を

 先日、私は東京消防庁のハイパーレスキュー 第六消防方面本部で、お話を伺いました。 重機などについて、埼玉県内7つの市や消防組合が運営している埼玉県特別機動援助隊と東京消防庁ハイパーレスキューの差をうめていかなければと思いますが、県内に特別機動援助隊が設置されている市及び消防組合の予算に頼るのでなく、県の予算が必要だと思いますが、いかがでしょうか?

(4) 埼玉県の広域消防化

 災害対策は各市町村では限界があり、県として消防の広域化を推進していますが、中々進んでいないように見受けられます。 私は広域化の行きつく所は、ハイパーレスキューを頂点とする東京消防庁のように、埼玉県をしていく事だと思います。  消防の広域化の県としての予算は、会議の事務費のみですが、東日本大震災が起き、その後も各地で地震が続いている今、広域化を更に推進していく上で、予算のインセンティブが必要ではないでしょうか?

答弁者:上田きよし県知事

 「緊急道路の渋滞対策」についてでありますが、基本的には、緊急通行車両が通行する道路などは、地域防災計画で、高速道路、国道4号、17号等ですね、主要国道が第1次緊急交通道路に定めてありますし、また、第2次緊急交通道路を指定することも、公安委員会がすることができます。 しかし、どう考えても、現況のままだとですね、あちこちから入ってくるということが予想されます。 なぜ、そうなのかと言うと、連絡が取れないからであります。 従って、電波管理者と電波ビジネスをやっている事業者に、災害情報と同じレベルの通話ができるように、ほとんど一人一人携帯を持っている訳ですから、何らかの形で連絡が取れさえすれば、こういうことは起こらない訳で、何よりも先に電波管理者と電波事業者の方々が、災害においても通用するキャパを作って、お互いに家族が連絡が取れると。あるいは、会社の幹部と社員の方との連絡が取れると、そうすれば、慌てて車に乗ることもない、乗ったところで時速2キロで歩いている人よりも遅いというで、そういう馬鹿なことにもならないということになるかと思いますし、帰宅者対策にもなりますし、色んな意味で、最後の問題は、連絡が取れないということに尽きると思いますので、これは、埼玉県知事やら都知事が判断して移動の規制を決定できるかというと、できないと思います。 そういう意味で、情報がきちっと流れるか流れないかということに全てがかかっていると思いますので、この部分を極力、コンビニやガソリンスタンドだとか人が立ち寄る所も含めて、いかに安定的な情報をきちっと渡せるかどうか、これに尽きるというふうに思いますので、しっかりその部分を今後も申し入れをしていきたい。 そして、そちらに電波管理の責任者であります総務省と、そして事業者の皆さん達に強く訴えていきたいと思います。 次に、九都県市で連携して地震が発生したときの移動規制を帰宅困難者対策と合わせてPRであると思いますが、これもまさしく、今言った話でありますので、私は何よりも情報が的確にアクセスできるということを最大限に震災対策の一つにしていくべきではないか、特に緊急的な対応については大事だと思っております。

 次に、「ハイパーレスキュー部隊に県の予算を」ということであります。 すでに御案内のように「埼玉県特別機動援助隊」通称「埼玉SMART(スマート)」は新潟中越地震におけるハイパーレスキュー隊の活動実績を参考にして、平成18年に設立をしました。  さいたま市消防局や所沢市消防本部など県内7つの消防本部から精鋭を集めて「機動救助隊」をつくり、県の「防災航空隊」と、更に災害拠点病院の「埼玉県災害派遣医療チーム」通称「埼玉DMAT(ディーマット)」、この3つの部隊で編成して日ごろから共同訓練をしながら、チームワークがうまくいくような体制作りをしておりまして、これが東京消防庁で言うところのハイパーレスキュー隊と同じような機能を果たしているような形になります。 ただ、東京消防庁のハイパーレスキュー隊と比べると、車輌とか資機材では、雲泥の差とは言いませんが、やっぱり横綱と関脇ぐらいの差は、大関一つ分は空けた上で離れているというのが実感であります。 そこに県としても予算の措置をやれと、つまり各消防本部なりに支援をしろと言うことになるかと思いますが、今の仕組みの中ではそういう仕組みにはなっていませんので、できれば消防の一元化をお願いをして、とりあえずは本部体制の中でですね、集約化をしていただく努力を今しているところであります。 この集約化が終われば一元化し、『埼玉消防庁』みたいな形になるようにするのがより強い災害対策になるし、消防対策になるものだと私は確信しております。

答弁者:危機管理防災部長

(2)「通勤・通学者対策」についてでございます。 まず、県職員が伝言ダイヤル訓練を行い、高校、企業でやっていただくようにしてはいかがかについてでございます。 災害発生後の安否の確認や避難場所の連絡などが、スムーズに行えるよう、固定電話及び携帯電話による災害用伝言サービスが通信各社から提供されています。 災害用伝言サービスは事前の登録は必要なくて、誰でも利用できますけれども、知っているだけではいざという時に役に立ちません。 通信各社は、東日本大震災の発生直後から災害用伝言サービスの運用を開始し、現在もサービスは提供されています。 この機会をとらえ、まず県職員に対しサービスの積極的な体験を呼び掛けてまいります。 さらに、高校へは防災学習の時間において、企業に対しては出前講座や徒歩帰宅訓練などを通して災害用伝言サービスの体験利用を呼び掛けてまいります。 次に、伝言ダイヤル以外の別の媒体を県や九都県市で検討し構築後、 PRしてはいかがかでございます。 現在、九都県市では携帯電話を利用し災害用伝言サービスの利用ができるよう、ポケットサイズの利用ガイドを作成し様々な場で提供しております。 引き続き、様々な機会をとらえ災害用伝言サービスの利用を働き掛けてまいります。 災害用伝言サービス以外の有効な媒体につきましては、まずは九都県市の防災・危機管理対策委員会 地震防災・危機管理対策部会に諮ってまいります。

答弁者:危機管理防災部長

 次に、(4)「埼玉県の消防広域化」について、お答えを申し上げます。 県は、現在、平成20年3月に策定した消防広域化推進計画に基づき、現在の36消防本部を7つのブロックに分けて広域化を進めております。 このうち、所沢市を中心とした第4ブロックは平成24年度末を目標に、また、久喜市を中心とした第7ブロックは平成24年10月を目標に、それぞれ協議会が設立され広域化に取り組んでいます。 しかし、その他のブロックでは、隣接する市の消防広域化に対する考え方の相違から、なかなか進んでいない状況にございます。 これまで県は、消防広域化のための協議会を設置した場合に50万円の補助をしてまいりました。 今年度から新たに、消防救急無線をデジタル化するに当たり、基地局を共同で整備する場合や、指令業務を共同で行う場合には、最高で250万円を補助することといたしました。 現在、国による財政支援として、消防広域運営計画の作成経費や広域化に伴い必要となる経費に対して特別交付税が措置されます。 このほか、消防庁舎の整備に対して、起債の充当率を75%から90%に引き上げるといった特例もございます。 県といたしましても、広域化に向けたインセンティブを高めるために、国に対してさらなる支援の拡充を求めてまいります。 今後もこれらの支援制度の活用を促進しながら、引き続き消防広域化に積極的に取り組んでまいります。