国民健康保険税 ‐ 県から市町村への徴税方式変更促進の中止を ‐

質問 中川 浩

国民健康保険については、現在、市町村が担当になっていますが、それを今後埼玉県が担う計画であります。しかし、その前提で大きな問題があります。県は現在、市町村に対して徴収する税金の方式を変更するよう市町村担当者の説明会を開くなどして促していますが、具体的には資産割を廃止するよう求めています。これは税の基本である担税力、すなわち税金を払える能力に応じて税金をかけるの考え方に反する、恐縮ですが誤った考えだと思います。国民健康保険に加入されている方は、社会保険に加入している方と比べ収入が比較的低いことが県の統計上明らかで、保険料負担が重いのが国民健康保険税の構造上の課題です。
 では、収入以外のどこに税を課せるかといえば、資産以外にあり得ません。これはもちろん住んでいる家に住めなくなるような資産に対する税金のかけ方ではなく、比較的広い土地を持っている方を対象にするということです。そして、県内の市町村は県がそのような指導、促進をする以前には、資産割の方式をしていたのが63市町村中54市町村と圧倒的に資産割の方式のところが多く、この間、2市が県からの促しもあって資産割をやめましたが、それでも現在52市町村が資産割を実施しています。
 具体的に資産割がどれほど重要か申しますと、県内市町村の平均で税収入のうちの約10パーセントを占めております。多いところでは2割を占めている市町村もあります。資産割を廃止して家庭の収入に対して増税したり、収入の多い少ないにかかわらず同じ額を課すこと、専門用語では平等割、均等割と言うそうですが、それはすなわち税金が払えない家を増やすことになります。そうでなくても国民健康保険税の収納率が下がっていることは、県の資料からも明らかであります。
 そして、資産割をなくして、例えば国民健康保険税を払えなくなった家庭に軽減措置を行うことは本末転倒であり、ボーダーラインの家庭に減免措置を行うかどうかは、ある意味、担当職員のさじかげん一つなので、県が促す制度によって県民に不安を与えてしまいます。さらに、資産割をなくしたことにより軽減、減免措置を行えば、市や県の一般会計からの繰り出しを増やすことになり、行政サービスが低下いたします。
 上田知事におかれましては、私が申し上げたことについてどう思われるかまず伺いたいのと、県が市町村に資産割をなくすよう徴税方式の変更を促すことを中止していただきたいと思いますが、お考えをお聞かせください。


答弁者:上田きよし県知事

県は、市町村国保の運営の安定に寄与するため、平成18年6月に11の市町村長、国保関係団体の長などをメンバーとする「国保の広域化に関する研究会」を設置しました。
 同研究会からは平成21年3月に報告書が提出されました。
 その中で、国民健康保険税の賦課方式については、4方式から資産割と平等割を除く所得割と均等割の2方式が適当という方向性が示されました。
 その理由として、資産割は固定資産税との二重課税であるという批判があることなどが挙げられました。
 そして、都市部と農村部で不動産価格の差が大きいため、県全体で資産割を導入すると都市部の方に負担が偏りすぎて市町村全体の合意形成が極めて困難になるだろう、このような指摘でございます。
 こうした考え方は、平成20年に後期高齢者医療制度で2方式が全国的に採用された際のベースにもなっています。
 資産のある方は担税力があるのではないか、という御指摘ですが、資産のある方が本当にそうなのかと言えば、必ずしもそうでない場合もあると思います。
 確かにマイホームである、しかし、かなり前に建てたマイホームで傷んでいる、おまけに国民年金以外に所得がない、そういう方に資産に係る担税力があるかどうかということになれば基本的にはあまりない話になるかと思います。
 逆に資産割が賦課されることにより、国民年金だけで暮らしている人にとっては税負担が増えるという形になります。
 そういう意味で、こうした人たちに負担が増える場合もあるということも考えていただきたいと思います。
 次に、資産を持たない人の場合ですが、2方式への移行に伴い所得割の税率が仮に1%上がったとします。
 国保の被保険者のうち実は23%が非課税世帯でございますので、所得割の税率が上がっても税額は元々ゼロですので影響を受けないと、所得割が上がっても元々所得のない人たちについては、それは影響はないと、しかも所得のある人が、所得割額が増えたとしても、その増加額は課税対象所得、例えば30万円の人でも年3千円の世界でありますし、300万円の人でも3万円という世界です。1%上がった場合ですね。
 所得の高い人ほどこういう意味で3千円、3万円ということであれば、負担が増えるわけですから、一見、この1%というものは、平等みたいに見えますが、実は高額所得者にとってみればたくさんの負担をするということであります。ある意味では、所得の再配分につながっていると私は思っております。
 そういう意味で、より担税力に応じた課税が強化されて、必ずしも税金を払えない家庭を増やすことにはつながらないんじゃないか、このように思っております。
 県では平成22年12月に、市町村国保の運営の広域化や財政の安定化を推進するため、「埼玉県市町村国保広域化等支援方針」というものを策定しました。
 このような考え方を踏まえて、賦課方式については「県内どこに住んでいても同じ所得なら同じ保険税」となる2方式への移行を推進することにいたしました。
 なお、県単位での広域化が実現されれば、税の減免方式についても全ての保険者で統一されることになり、サジ加減で減免されるということはなくなります。
 現行の市町村支援方針は今年度末で終期を迎えるため、現在改定作業を行っております。
 賦課方式の統一についても、改めて全市町村の意見をお聞きしておりますが、明確に反対の意見を表明しているのは63保険者中1保険者のみの状況でございます。
 市町村国保の広域化を実現するため、県としては今後も市町村の意向を踏まえて保険税収入の基礎となる賦課方式の統一を図っていきたいと考えます。


再質問 中川 浩

細かいことを申し上げるつもりはございません。国民健康保険税の広域化については、私の公約の一つでもございます。その上で、先ほどの知事答弁の中で私が気になったことを申し上げたいのですが、根幹的な質問は資産割を今の市町村にやめるように指導することを中止していただきたいという再質問であります。
 格差社会になっているのは、皆さんご存じのとおりです。先ほど知事のご答弁で、非課税世帯があるではないかというふうなお話があったと思うんですが、何でもそうなんですけれども、ボーダーライン上の低所得者に対する対応がこれからますます、例えば消費税が課税をされ、より低所得者が大変な状況になったときに更に資産割を廃止して課税をするということは、先ほど二重課税というお話がありましたが、一般会計から繰り出しをすれば結果的に二重課税と同じ状況になるのではないかと思います。また、県南地域は確かに地価が高いわけでありますけれども、例えばの話、2ブロックで県南地域1ブロック、それ以外の地域2ブロックという方法もなくはないのではないかと思います。そういうようなことで、国保について質問を再度させていただきます。


答弁者:上田きよし県知事

まず後段の方から申し上げますが、都市部と郡部と2ブロックにしたらどうかということでいえば、まさに広域化するという中川議員の原点が無くなるものだと思っております。
 できるだけ一つにまとめようというのが国保の全体の流れで、もっと言えば全部国にした方がいいんじゃないかという議論まであるぐらいでございますので、そういう意味でもできるだけ統一していくという議論の方が望ましいものだと思っております。
 そして、県が2方式にするよう市町村を説得しているような話ではありません。皆さんの選択肢が2方式ということで、4方式を望んでいるのは1保険者のみで首長さんの所属する政党の特殊な考え方だというふうに私は理解しております。
 それから、資産割の部分は、こういう判断があったんだと思います。
 例えば、広大な農地を所有されたり、山林を所有されている資産家がおられると、しかし、所得は意外にない。そして、しかし、資産はあると。でも、結婚する時に娘さんにたくさんのお金を出したりする、それは山を売ってとか。
 普段は所得がないが、資産があるからということで資産割をしているようなところがあるわけですけれども、都市部の方はまさに所得がありますから、その所得にきちっとかけられるではないかと。
 まさに、山林地域なんかというのは所得がないので所得にかけにくいと。従って資産割があったというふうに理解をするところがあると思いますが、そういうご理解をいただければ、比較的都市部を中心に4方式から2方式に変わりつつあるというのも、ある程度この構造変化というのでしょうか、時代の変化だというふうにご理解を賜りたいと思います。
 中川議員の信念であります広域化そのものにはまさしく合致していると、このように私は思っておりますので、ご理解を賜りたいと思います。