12月8日 埼玉新聞
通勤・通学者への今後の啓発・訓練
質問 中川 浩
阪神・淡路大震災以降、この16年間、大きな災害が何度もありましたが、啓発・訓練が徹底されたとは思えない部分があります。人はやったことがないことをいざというときにやるのは難しいものです。誰でもそうですが、課題を実際に実行しなければ意識、発想も変わりません。言い方を変えますと、私は妻に体を鍛えろと言われているんですが、この質問が終わったら、あるいは選挙が終わったらスポーツジムに通わないとなかなか自分が変われないと思っていることからも申し上げております。
さて、その大きな一つが、震災対策で考えますと通勤・通学者の啓発・訓練についてであります。都内などに通勤している人が車で移動することがあるわけですが、昨年、私が6月定例県議会の一般質問で緊急輸送道路の確保について質問して以降、東京都では緊急輸送道路の訓練が二度、実際に道路を約10分間止めて行われました。埼玉県でそれを行う必要について伺います。
また、例えば震災時、スーパーなどの大型駐車場に一時的に車を避難、駐車させる協定は必要ないでしょうか。
災害時に救助活動の車両を優先するために、災害時伝言ダイヤルの訓練は不可欠であります。伝言ダイヤルについて、昨年の質問以降、県立高校での訓練は行われていないように感じられます。例えば埼玉県として、あるいは関東にある九都県市で電車の車内映像、ドアのところの上にある車内映像で震災対策の通勤・通学者に対して啓発をされてはいかがかと思いますが、知事のお考えをお聞かせください。
答弁者:上田清司 知事
まず、緊急輸送道路の訓練についてでございます。
本県についても今年の県と飯能市の合同防災訓練において、飯能市の一部で実施いたしました。
また、県警においても今年9月に大宮駅西口の国道17号の一区画を封鎖する訓練も実施しています。
これらの訓練は、緊急交通路の確保の実効性を高めるためにも必要だと考えております。
より効果的な訓練の実施とドライバーへのPRについては、警察本部と調整を図るよう危機管理防災部に指示をしておきます。
次に、スーパーなどの大型駐車場に一時的に車を避難・駐車させる協定についてでございます。
災害時には消防、警察等の緊急車両の通行を確保する必要があります。
災害対策基本法に基づき公安委員会が、緊急交通路を指定し一般車両の通行を制限します。
指定された緊急交通路の主要交差点には、警察官が配置され一般車両の進入規制や他路線への誘導を行います。
運転手のいる車両は他路線へ誘導しますが、事故車両などについては緊急交通路の大きな支障になることが予想されます。
大規模商業施設の駐車場は、事故車両などの一時保管所や支援車両の集会所として有効であると考えられます。
沿道の活用できるスペースについては、一刻も早く人命を救出する目的から所有者に協力いただけるように働き掛けてまいります。
次に、災害用伝言サービスの学校での訓練の実施状況です。
全ての児童生徒及び保護者が携帯電話を所持しているとは限らないために、学校では一律に訓練を実施やっておりません。
児童生徒の安否の確認については、安全に保護者に子供たちを引き渡す観点から極めて重要であります。
昨年9月に改訂した学校防災マニュアルでは、児童生徒の安否情報を保護者に伝える手段として災害用伝言サービスの活用も盛り込みました。
家庭での体験利用を勧奨するプリントを配布するなど教育現場で防災教育として取り組んでいく必要があります。
一番重要なことは先生と保護者間で災害用伝言サービスの伝達訓練を何回も実施することです。
教育委員会においてはこの災害用伝言サービスの伝達訓練を徹底して取り組んでいただきたいと思います。
次に、災害用伝言サービスの電車の車内映像の啓発でございます。
帰宅困難者対策で最も重要なのは、「むやみに移動を開始しない」ということでございます。
このため、家族の安否が確認できるということに尽きる、こう言っても過言ではありません。
議員お話しの家族安否確認方法として、災害用伝言サービスの周知を行うことが極めて重要であります。
電車内の映像による広報は、アイキャッチの面では優れている一方、じっくりと読み込むことができません。
現在、九都県市で首都圏の17鉄道事業者を通じて、通勤・通学の行動経路である駅構内や車内に災害用伝言サービスのポスターを掲示しております。
さらに、今後は駅前滞留者の帰宅困難訓練の場を通じ災害用伝言サービスの操作研修などを行って、普及啓発に努めていきたいと思います。
県立病院(がんセンター・精神医療センター)での災害時等、大規模急患の受入れ・訓練を
再質問 中川 浩
私は今年3月に、県立精神医療センターと県立がんセンターを視察させていただきお聞きしましたところ、この2つの県立病院では災害時にけが人などを受け入れることは想定しておらず、トリアージなどの災害時を想定した訓練は行っていないとのことでした。たとえこの2病院が分野を特化した県立病院であっても、この県立2病院における災害時などの、テロもあるかもしれませんが、災害時などの大規模に急患が発生しかねない状況の場合の受け入れや、非番の医師等の県職員ならびに県のOB職員のほかの病院への応援体制の整備やトリアージ、医師等の参集訓練などの訓練をすべきと考えますが、病院事業管理者のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
答弁者:上名和 肇 病院事業管理者
県民の生命・身体を守ることは、県立病院の使命であり、大規模災害など有事の際には、入院患者の安全確保に加え、負傷者の受入れと初期救急に当たる必要があります。
これまで両病院では、入院及び外来患者さんを対象として災害時に備えた訓練を実施してまいりました。
今後は、これに加え、大規模災害時等における負傷者の受入訓練を実施いたします。
具体的な治療の例では、がんセンターは、止血、点滴などの応急処置や縫合などの外科的処置が可能です。
精神医療センターでは、パニック状態に陥った方の治療に加え、応急処置が可能です。
このように、それぞれの病院の特性に応じ、自らの病院で対応できる患者と他の医療機関に搬送する患者とを適切に振り分けることが必要です。
そのために、患者の振り分けや診察・処置などを行うスペースの想定とスタッフ一人一人が適切な行動がとれるよう訓練を実施します。
さらに、治療の優先度を決めるトリアージ教育を行うなど、大規模災害時等においても県民の安心・安全が図れるよう、各種医療職と事務職による合同訓練を重ねてまいります。
なお、他病院への応援体制の整備については、その可能性を研究してまいります。